≪ITメトリクス導入事例対談≫ 定量的プロジェクトマネジメントの実践事例 ~明治安田生命保険相互会社様の場合~
【対談 出席者】
●明治安田生命保険相互会社
長嶋伸二様(情報システム部 サイバーセキュリティ・品質管理部長)
小堀正一様(情報システム部 サイバーセキュリティ・品質管理担当 主席ITアーキテクト)
●株式会社トインクス
阿久津克之(開発運用本部 業務管理室長)
佐藤浩明(開発運用本部 業務管理室 担当課長)
熊谷啓(開発運用本部 業務管理室)
※組織名称や役職は,2022年12月時点での情報です。
「ITメトリクス導入・解析支援サービス」は、2016年度から開始した比較的新しいサービスですが、開始に至るまでの10年以上にわたる実データの蓄積と分析の積み重ねが、コンサルタント業務を成立させています。
明治安田生命様では2019年の7月以来、3年以上継続して本サービスを適用していただいております。今回の対談では、本サービスを導入された背景や、得られた効果、今後の取り組みへの展望などについて、忌憚のないご意見をいただきました。
■ITメトリクス導入・解析支援サービスを導入した背景
明治安田生命:小堀主席ITA 当社でも開発量が非常に増えてきていますが、今後ベテランたちは5年後、10年後、現場の一線から抜けていくことが想定されます。そこで、システム開発を安定的に進めるために、精度の高い評価指標を作り、専門な知見を有する人から適切なアドバイスをいただきたいと思い、当社への導入支援をご相談することにしました。

明治安田生命保険相互会社 小堀正一様
明治安田生命:長嶋部長 最初に定量的プロジェクトマネジメントに取り組みたいと担当から聞いた時、インプットとなる情報の収集など開発現場に負荷がかかることもあり、本当に効果のある評価手法ができるのか心配でした。
しかし、コスト超過の防止や開発生産性の向上、品質向上のためには、見積もりの妥当性やテストの品質を評価するための物差しとなる定量的指標が必要と考えていましたので、開発現場に追加の負担をかけないこと、想定通りの結果が得られない場合は中止もあることを条件として取り組みを許可しました。

明治安田生命保険相互会社 長嶋伸二様
■定量的プロジェクトマネジメントに関する4つの取り組み
トインクス:佐藤 明治安田生命様の場合は、まず最初に要望の整理、現状分析ということで、今までどういう取り組みをしてきたのかを確認させていただきました。その上で、大きく分けると4つの作業を提案し、これまで支援させていただいています。

株式会社トインクス 佐藤浩明

1つ目は、データ計測規約の作成、メトリクス定義などの計測準備作業です。
2つ目は、開発プロジェクト向けに工数や期間、テストケース数などを予測するモデルの作成です。
3つ目は、ベンチマーキングです。業界標準の団体が提供するデータを用いて、明治安田生命様の立ち位置や強み・弱みをQCD(品質、コスト、工期)の観点から評価しました。
4つ目は、そのベンチマーキングから特定した課題を解決するためのプロセス整備です。
■導入後に得られた効果と今後への取り組み
明治安田生命:長嶋部長 メトリクスを導入してから2年が経ちますが、その間にメトリクスの利用者向け研修をしていただいたり、モニタリングを通して指導してきたこともあり、開発現場には浸透しつつあります。これにより、定性的な評価だけに頼らず、定量的な視点を加えることによって、システム品質の向上が期待できると考えています。
明治安田生命:小堀主席ITA 客観的な評価指標の導入により、テスト工程の品質を評価するプロセスの質が上がってきているんじゃないかと感じております。改善効果については、次年度以降のベンチマーキングで、開発効率が改善しているか、品質が落ちていないか、といったところをチェックしていきたいと思っています。
2年ほどでデータを一定程度蓄積できたので、現状は開発タイプ別、ホスト・オープン別までの層別ですが、さらに細分化してグループ別に層別し、より現場での実態に即した精度の高い評価指標にバージョンアップしていきたいと考えております。
トインクス:熊谷 明治安田生命様は、毎年のデータ蓄積量が多いので、現在用いている単回帰分析だけではなく、さらにもう少し高度な分析手法である重回帰分析などもご提案できればと考えております。
また、ベンチマーキングから見えてくるプロセスの問題などについては、標準化の整備などでご支援できると思いますし、現在収集していない上流工程のデータについても、弊社のノウハウや計測ルールなども参考にできるかと思います。

株式会社トインクス 熊谷啓
■今後の展望 ITメトリクス導入・解析支援サービスへのさらなる期待
明治安田生命:小堀主席ITA 恐らくどこの事業会社さんでも、程度の違いこそあれ、当社と同様の課題認識を持っていらっしゃると思います。
まずは、データを収集するといったところから始めて、専門家の目を通して分析していただくことで、感覚的には分からなかったようなことが明確になるのではないかと思います。
当社では、トインクスさんの「ITメトリクス導入・解析サービス」の導入により、これまで申しあげたような成果が得られておりますので、他社にも自信を持ってお勧めできると考えています。
トインクス:阿久津 「ITメトリクス導入・解析支援サービス」は、現在、最大6名のコンサルタントの要員がおりますので、より多くのお客様にさまざまな視点からご支援できるようになりました。
明治安田生命様に適用している単回帰分析だけでなく、重回帰分析を用いたより高度な予測モデルの解析も支援させていただける状況になっています。
さらに、WBS(Work Breakdown Structure)/EVM(Earned Value Management)やSRGM(ソフトウェア信頼度成長モデル)のような定量的マネジメントを支援するツールの作成や、プロジェクトの情報を一元管理して、経営層を含めた関係者で共有する「Co.守り」システムの開発なども手掛けております。
本サービスは定量的プロジェクトマネジメントの実践ということで、見積もりの精度向上、生産性・品質の向上を目的に行っており、ITに関するあらゆるユーザー企業様やベンダー様に適用できるものと考えております。お客様の多様なニーズに合わせて、継続的な長期の支援だけではなく、スポット的な対応支援も可能ですので、ご要望の際には是非ともお声がけいただければと思っています。

株式会社トインクス 阿久津克之
※明治安田生命様の定量的プロジェクトマネジメントに関する具体的な取り組み内容や、得られた効果については、対談の模様を詳細に収録したパンフレット及び動画をご覧ください。